@article{oai:mdu.repo.nii.ac.jp:00000112, author = {寺島, 伸佳}, issue = {1}, journal = {松本歯学}, month = {Apr}, note = {application/pdf, 【目的】チタンは生体親和性に優れているという特徴を生かし,歯科用インプラント材としての使用頻度が高い.しかし近年,インプラント体としてのチタンと,上部構造物の合金の種類によっては,ガルバニック作用が生じてアレルギーが発症することが報告されている.そこで本報は,より生体安全性に優れたインプラント材の開発を目的として,チタン表面に積極的に酸化膜を付与することで,耐食性を向上させることが可能であると考え,その耐食性について,溶出試験および電気化学特性試験を用いて詳細に検討した.【方法】JIS第2種チタン圧延板(1×1cm)を使用し,温度400℃,600℃,800℃にてそれぞれ40分,60分,80分の加熱処理を行い,酸化膜を付与した試験片を作製した.また,比較のために同様の処理を行った試験片の酸化膜を除去した試験片を作製した.溶出試験は,酸化膜有無の試験片をそれぞれ1%乳酸溶液80mlに浸漬し,振とう器で毎分100回,37℃で6ヶ月間保持した後,チタンの溶出量を定量分析した.電気化学特性試験は,電気化学分極測定装置と37℃の恒温槽内に設置した電解セルを用いて,1%乳酸溶液70ml中で電位走査を行い,電位と電流密度の関係をプロットした.得られた動電位分極曲線から1%乳酸溶液への試験片の分極抵抗値(Rp)を算出した.酸化膜の表面性状については,グロー放電発光分析装置を使用して酸素・窒素・炭素の拡散状態について,表層から最大深さ約10μmまでの測定条件にて測定を行なった.さらにレーザー顕微鏡にて表面観察を行なった.硬さ試験は,ビッカース硬さ計にて荷重100gで荷重負荷時間15秒で,1試料10ヵ所の硬さを測定した.また,1%乳酸溶液に6ヶ月間浸漬後の試験片も同様に測定を行った.細胞培養試験は,マウス頭蓋骨由来の初代培養骨芽細胞を用いた.37℃,5%CO²環境下で2日間と4日間培養し,細胞数の計測は2日後,4日後に行った.Alamar Blueにて反応させた培養液の吸光度を,励起波長560nm,検出波長590nmを用いて測定し,細胞増殖数の比較を行なった.【結果および考察】表面性状は,レーザー顕微鏡観察において,400℃では結晶粒界がはっきり確認できた.600℃は粒界が見られる部位とまだら模様に見られる部位があった.800℃では,酸化膜は均一で全体的に盛り上がり粒界は確認できなかった.グロー放電発光分析装置において,酸素の拡散は加熱温度が高いほど深部まで拡散が認められたが,時間における違いは少なかった.これらのことから表面性状は,加熱温度が高くなるほど酸化膜が均一に厚くなることが確認された.硬さ試験では,400℃と比較して600℃で2倍,800℃で4倍の硬さであった.これは,酸化膜が厚くなったためと考えられる.加熱処理によって酸化膜を付与した試験片からのチタンの溶出量は,すべての処理温度で,ブラスト処理したものより有意に少なかった(p<0.01).同じ加熱温度では時間による差異はほとんど認められなかった.加熱温度が高いほどチタンの溶出量は減少し耐食性が向上した.電気化学的特性試験においても加熱温度が高くなるにしたがって,分極抵抗値が大きくなる傾向が認められた.また800℃で加熱した試験片は,絶縁体で電気を通さないため測定不可能であった.このことから800℃で加熱処理をしたチタンをインプラント体に使用した場合,上部構造物の合金の種類によって,ガルバニック腐食や孔食が生じることはないと考えられる.しかし溶出試験において,800℃で処理した試験片から微量のチタンの溶出が認められたのは,電気化学的な溶出ではなく,6ヶ月間という長期の浸漬期間に,振とうによるチタン同士による摩擦やガラス瓶との摩擦等により生じたと考えられる.細胞培養試験においては,2日目よりも4日目の方が,細胞増殖が認められたことから,チタンの酸化膜上で細胞は生着し増殖したと考えられる.}, pages = {35--50}, title = {酸化膜を付与した歯科用インプラント材としてのチタンの研究}, volume = {35}, year = {2009} }